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10/19/2015

Business Risk

アメリカにいる現在でも、ここ最近日本では横浜のマンション傾斜問題は大きく取り上げられているのではないかという印象を受けます。

消費者である住民は一生ものの買い物をした一方、販売業者、施工業者は十分な注意義務を払って消費者に商品・サービスを提供できたのか。

スポーツの世界でも可能な限りリスクは回避できるように運営されてしかるべきです。細かいところでいえば、チーム管轄下の選手のSNS発信。わけのわからないことが世界に発信されてチームのブランドが傷つかないように。NFLをよく騒がせるDV(家庭内暴力)もひとつのリスクでしょう。

そのほかに、災害が起きた時にスタジアム内の観客を安全に誘導できるようなプランが設計され、現場スタッフに指導が徹底されているか。

話をマンション傾斜問題に戻して、果たしてこのリスクは回避できることができたのか。販売業者の三井不動産レジデンシャルは上場会社の三井不動産の子会社ですから、財務報告に係るリスクはちゃんと手当てするようなプロセスがあってしかるべきです。では究極的に財務報告にヒットしてしまう今回のようなビジネスリスクは?

おそらく三井不動産レジデンシャルの経営陣にとってほとんど検討したことのないようなリスクなのでしょう。間違っているかもしれませんが、契約をきっちり交わして施工業者に工事をお願いするわけですから、三井不動産レジデンシャルは性善説にたって、施工業者の下請け監理状況まではチェックを行おうとしないでしょう。おそらく、契約書に「施工業者は下請けを設ける場合には、下請けを責任をもって管理する」なんて文言があり、「責任が履行されない場合には販売業者である三井不動産レジデンシャルに対して賠償責任を負う」と責任を明確にしているのではないでしょうか。

でも、もし責任が履行されないときに、お金による解決はできても消費者であるマンション購入者は長期にわたり不安に貶められてしまうわけですし、当の販売業者三井不動産レジデンシャルの評判も著しく棄損することでしょう。

会計監査の経験に基づいて、ビジネスリスクを管理するサービスを提供する日本国内の大手監査法人。今回の事件に対処する専門的スキルが備わっているかというと疑問です。私が一緒に仕事をした仲間では上司を含めて建築の専門的知識を有している人はいませんでした。「下請け監理のリスクとコントロールを識別して文書化、コントロールテストをしましょう」というところまで監査法人ではできますが、果たしてコントロールのテストまで請け負ったときに、ちゃんと証跡を正しく読める人材がいるのか(さらに踏み込んで、偽装の可能性まで見抜けるか)。残念ながら厳しいです。

今回の件に関しては、監査法人のビジネスリスクサービスの無力さを感じてしまいます。

2020年の東京オリンピックに向けてスタジアムの新規建築、マンション需要の増加が見込まれて、建築にまつわる今回のようなリスクは確かにそこに存在するのにです。

現状の監査法人だけでは対処できないリスクですから、大手建築事務所やゼネコンとタッグを組むというのも一つの手段としては良いかもしれませんが。

2/01/2008

監査意見

監査契約では会社が監査法人や公認会計士に監査報酬を支払って、監査を行い、その結果監査法人や公認会計士が監査意見として監査報告書を発行するというのが現実社会では間違いないと思います。

中には監査報酬を支払っているのだから当然「無限定適正意見」を得られるなんて思っている会社もあるかもしれません。

ちゃんと会計基準に準拠して財務報告ができていれば問題はあまりおきないでしょう。

でも、財務報告がちゃんとできていない場合は?

僕の監査している企業(非上場)は、ひょっとしたら監査人が監査意見を表明しないかもしれません。教科書では意見表明をしない場合があるなんていうのは勉強しましたが、本当にそんなことがおきてしますなんてと若干驚いています。

そこで、会社は監査報酬を支払っておきながら、「監査人は監査意見を表明しないなんてどんなことだ」、とか思っているかもしれません。でもそうした事態を招いているのは会社の財務報告がちゃんとできていないことに起因していたりします。

監査人やその背後にいる投資家を欺こうなんて考えていたら、経済にとって不利益ですから、退場でもしてもらいますか?それとも改善してもらいますか?会社の対応次第です。

10/25/2007

中間監査

中間監査の最中でやや忙しいのでブログを更新するのをさぼってました。
忙しいといってもまだ土日を休まずに仕事するという状況ではなく、クライアントが資料を出してくるのを待っているという感じです。クライアントが出してくる資料に基づいて監査を行うわけですから、たしかに自分たち監査人が資料を作成する場面はあるものの、クライアントの情報に依存する場面は多いです。

クライアントの情報や内部統制に依存する場面が多いということは、不正が行われていたらどうでしょうか?僕にとってはまだそれを発見するのは難しいというのが実感です。不正が行われていて、かつ、経営者がそれを隠蔽しようとしていれば、さらにそれを発見するのは困難です。ある取引や勘定についてはリスクが高いと評価することはできても、経営者が隠蔽する姿勢をもって財務諸表を作成していたら大変なことです。

それを投資家はどうみるのでしょうか?おそらく会計監査人は不正を発見することはできなかったとみなすのでしょう。でも、会計監査人はそれに加担するつもりなど毛頭ない場合もありますし、職業専門家としての注意義務を果たして業務を行っていることもあります。そういった場合には責任の所在を法廷で争うのが適切でしょう。